ウチとソト ~「お父(とう)さん」VS「父(ちち)」、「お母(かあ)さん」VS「母(はは)」~

日本人のコミュニケーション:Japanese communication

English article is here; https://japaneselanguagesalonbymikapanda.com/uchi-and-soto-inside-and-outside-what-is-the-difference-of-chichi-and-otousan-1491

なぜ「先生の【父】」は間違(まちが)いなの?

こんにちは! ミカパンダです。

突然(とつぜん)ですが、あなたは自分(じぶん)の家族(かぞく)のことを日本語で紹介(しょうかい)できますか?

そして、誰(だれ)かの家族について質問(しつもん)することはできますか?

そして、なぜ上(うえ)の画像(がぞう)の文(ぶん)が間違(まちが)っているのか、わかりますか?

今回(こんかい)は、「お父さん」と「父」、「お母さん」と「母」などの違(ちが)いについて説明(せつめい)したいと思(おも)います!

ちなみに今回の内容(ないよう)は、日本語を勉強(べんきょう)する上(うえ)でとても大切(たいせつ)な概念(がいねん)になりますので、ぜひ活(い)かしてください!

「ウチ」と「ソト」

家族(かぞく)の場合(ばあい)

先(さき)ほどの文(ぶん)は、「先生の【お父さん】の【お仕事】は何ですか?」にすると正解(せいかい)になります。

しかし、【私】が話(はな)す場合(ばあい)は、「私の【父(ちち)】の【仕事】は会社員(かいしゃいん)です」で正(ただ)しくなります。

なぜでしょうか?

それは、「私の父」という人物(じんぶつ)は私にとって【ウチ】の存在(そんざい)であり、少年(しょうねん)にとっては【ソト】の存在だからです!!

【ウチ】とは「内(うち)」、【ソト】とは「外(そと)」のこと。

つまり、自分(じぶん)が所属(しょぞく)している集団(しゅうだん)が【ウチ】所属していない集団が【ソト】になります。

【ウチ】に所属している人物(じんぶつ)に対(たい)しては、丁寧(ていねい)な表現(ひょうげん)は使(つか)いません。

しかし、【ソト】に所属している人物に対しては、丁寧な表現を使わなければいけません!!

ですから、「先生の【父】」ではなく、「先生の【お父さん】」と言(い)わなければいけないということです。

【父】や【仕事】などの言葉(ことば)の前(まえ)に「お」や「ご」をつけると、丁寧な表現になります。また、人に対しては最後(さいご)に「さん」をつけると丁寧になります。

同様(どうよう)に、「先生の【母】の【仕事】」ではなく「先生の【お母さん】の【お仕事】」が正解(せいかい)になり、

「私の【母】の【仕事】は小学校の先生です。」が正解になるのです。

 

同(おな)じく、【少年の父親(ちちおや)】は【私】にとって【ソト】の人物(じんぶつ)ですから、【あなたの父】ではなく【あなたのお父さん】と言(い)わなければいけません。

けれど、少年の父親(ちちおや)は少年にとって【ウチ】の存在(そんざい)なので、

「私の【父】の【仕事】は公務員(こうむいん)です。」が正解となります。

ちなみに、こちらがその他(ほか)の家族の表現(ひょうげん)になります。

会社(かいしゃ)の場合

また、【ウチ】と【ソト】の概念は、会社という集団(しゅうだん)にも適用(てきよう)されます。

家族の場合と同じように、【私】の所属(しょぞく)する集団が【ウチ】、つまり自分の会社の社員(しゃいん)たちが【ウチ】になります。

そして、他(ほか)の会社の社員たちが【ソト】の人物になります。

それは、立場(たちば)が逆(ぎゃく)になっても同様です。

それでは、職場(しょくば)での会話(かいわ)の例(れい)をみてみましょう。

例(たと)えば、他の会社へ電話(でんわ)をする場合、自分の名前(なまえ)に「さん」はつけません。

なぜなら、自分は【ウチ】の人物だからです。

そして、他の会社の社員や顧客(こきゃく)の名前には、最後に「様(さま)」をつけなければいけません。なぜなら、彼らは【ソト】の人物だからです。

ちなみに、「~様」は「~さん」より丁寧な表現です。仕事中(ちゅう)は、【ソト】の人に対して「~様」を使います。

そして、電話をしている女性(じょせい)にとって高橋(たかはし)社長(しゃちょう)はもちろん【上司(じょうし)】ですが、自分にとっては同じ会社に所属する【ウチ】の存在なので、【ソト】の人物に対しては「さん」や「様」をつけず、「高橋」と名字(みょうじ)だけを言います。

「畏(かしこ)まりました」とは、「わかりました」という意味(いみ)です。

再(ふたた)び、「ミカパンダ銀行の山田」と名乗(なの)り、「【お】電話」ではなく「電話」と言っていますね。

しかし、女性にとって相手(あいて)の男性(だんせい)は【ソト】の人物なので、「山田【様】」「【お】電話」と言うのが正解です。

そして、ミカパンダ銀行の山田さんから電話があったことを秘書(ひしょ)が女性から聞(き)き、秘書はそのまま社長に伝(つた)えたという流(なが)れですね。

ところで、「社員の鈴木(すずき)」とは誰(だれ)のことでしょうか?

正解は、先(さき)ほど山田さんと電話をしていた女性です。秘書にとっても、鈴木さんは同じ会社に所属する【ウチ】の存在なので、「さん」や「様」はつけずに「鈴木」と言っています。

最後(さいご)に

なぜそのような概念(がいねん)があるのか

いかがでしたか?

何(なん)だか複雑(ふくざつ)過(す)ぎてよくわからないなぁ、と思(おも)われた方(かた)もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、特(とく)に日本の会社で働(はたら)く場合、最後(さいご)の電話のような話(はな)し方(かた)は必須(ひっす)スキルになりますので、たくさん練習(れんしゅう)しておきましょう!

それにしても、なぜ日本人には【ウチ】と【ソト】という概念(がいねん)が根付(ねづ)いているのでしょうか?

その答(こた)えにはやはり諸説(しょせつ)ありますが、まず日本人は農耕(のうこう)民族(みんぞく)で「農村(のうそん)」という「共同体(きょうどうたい)」を基盤(きばん)としており、互(たが)いに協力(きょうりょく)し合(あ)って生(い)きてきたから【ウチ】という概念が生(う)まれ、それから村(むら)の外部(がいぶ)の人間(にんげん)を【ソト】と認識(にんしき)するようになったという説(せつ)が有力(ゆうりょく)なようです。

「ウチ」と「ソト」の影響(えいきょう)

先ほど読(よ)んで頂(いただ)いた通(とお)り、【ウチ】【ソト】の概念は、日本語に「【ソト】の存在は敬(うやま)うべき」という考(かんが)え方(かた)を植(う)えつけています。

しかし、その概念は時(とき)に差別的(さべつてき)な思想(しそう)を生(う)みだしてしまうものにもなるので、私はそれが残念(ざんねん)でなりません。

けれど、【ウチ】と【ソト】の概念は「自分たちは謙虚(けんきょ)に、他の人々(ひとびと)には丁寧に」という思想を与(あた)えたと考えれば、悪(わる)いものではないと思います。

皆(みな)さんにとっては日本語を余計(よけい)難(むずか)しくしたものかもしれませんが、慣(な)れれば自然(しぜん)と使えるようになるはずなので、少(すこ)しずつ頑張(がんば)ってみてください!

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