小説(しょうせつ): Novel

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ユナイタマの島 9

ランタンを掲げながら、二人で暗い山道を歩いた。ハブに咬まれないよう用心しながら登っていたが、幸いそれに遭遇することはなかった。 山頂に辿り着いた時、満天の夜空に一筋の閃光が走った。天の川も見える。 「凄い……」 まるで宇宙...
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ユナイタマの島 8

「大丈夫、大海!? ねぇ開けて、お願いだから! 返事もできないくらい痛むの!?」 息子の部屋のドアを、叫びながら叩く聡美。中からは、苦しそうな呻き声と荒い呼吸が聞こえてくる。 「だい、じょぶ……だから、ほっといて、おかあさ……っ...
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ユナイタマの島(しま) 7

人魚の謎も事件の真相も解き明かされないまま、大型連休は幕を下ろした。体験ダイビングのブログは読者に好評だったが、残念ながら予約に直結することはなかった。 学校にいる間、大海は波音の様子をさり気なく観察していたが、特に大きな変化は見られ...
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ユナイタマの島(しま) 6

連休の最終日は、爽やかな風の吹く晴天だった。ヘルパーとして働いている美桜はそれまで宿とダイビングショップの大掃除や草刈りに専念していたが、我慢の限界に達したのか、居間で大海と顔を合わせた途端にこう言った。 「ねぇ、ヒロミくん。今日一緒...
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ユナイタマの島(しま) 5

大型連休は結局一件の予約もないまま始まってしまったが、その数日間は大海たち赤間中学校野球部ナインにとっては大忙しであった。八重山(やえやま)諸島――石垣島から与那国島まで――の各中学校球児のための軟式野球大会『カンムリワシ杯』が開催...
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ユナイタマの島(しま) 4

岩田(いわた)俊史(としふみ)、三十二歳無職、独身、東京都在住。それが、遺体となって発見されたてぃだぬかじの宿泊客の身元であった。県警による司法解剖の結果、胃からは大量の塩酸テトラヒドロゾリンが検出された。その物質には目の充血を解消...
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ユナイタマの島(しま) 3

「あの……大丈夫ですか、ミオウさん」 マッコウクジラの死体を目の当たりにしてから数日間、美桜は思いつめた表情で虚空を見つめることが多くなった。大好きなギターにも手をつけておらず、流石に不安になり、大海は部活帰りに彼の部屋を訪ねた。 ...
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ユナイタマの島(しま) 2

「ねぇ、ジャン・ミシェル美桜って知ってる?」 翌日、大海は同級生にCDを見せながら彼のことを聞いた。宿のパソコンを借りてチェックしてみたところ、彼が主にネット上で活動しているミュージシャンであることがわかったからだ。 「...
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ユナイタマの島(しま) 1

 沖縄県八重山(やえやま)諸島に属(ぞく)する赤間島(あかまじま)の中学生・赤郷(あかざと)大海(ひろみ)は、島の民宿兼ダイビングショップ・「てぃだぬかじ」を営む家族と暮らしていた。しかし、島を訪れる若者が次々と行方不明になる事件が多発した影響で、観光客の足が途絶えてしまう。そして、「赤間島には人魚がいる」という噂も広まっていた。
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海(うみ)を夢(ゆめ)見(み)た蛙(かわず)6 【完結(かんけつ)】

「面会希望の方。どうぞ、お入りください」 入室を促され、刑務官に会釈する。ガラス越しに見えたのは、囚人服に身を包んだ織田明姫の姿だった。彼女は、窃盗罪、贈収賄の罪、そしてチャイニーズマフィアへの誘拐の幇助の罪で受刑している。 「...
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